翔君がキッチンで唯一出来るのは、コーヒーを淹れる事
お湯を沸かしてる間に、二人分の豆を挽く
今日の豆は『コピ ルアク』
ジャコウネコの体内で熟成された豆
綾野君が引っ越し祝いとしてくれたもの
(普段は高くて手にしない豆)
翔君は象さんよりは猫さんの方が好きらしい
ソファーに寝そべりながら
ぎこちなく豆を挽く様子を眺めてる
「服を着ろ! ・・・ いくら風呂上がりだからって ・・・
風邪引いたらどうすんの?」
バスローブ一を着て、前は開(はだ)けた状態
「大丈夫、パンツ穿いてるだけ偉いでしょ?」
そう言ってニヤリと笑う
「どこが偉いんだか?」
それも穿けって言ったから穿いたんじゃん
さっきまで、ぶら下がってたよ
「美味しいコーヒー淹れるからね
お腹空いたでしょ?
何か作ろうか?」
ニッコリ笑うけど ・・・
一体何が作れるのか教えてくれないか?
「腹は減ってる ・・・ だってもう昼じゃん ・・・
お前、どんだけ盛ってたんだ ・・・」
俺も1週間ぶりで夢中にはなったよ
なったけど、限度があるだろう
正直、腰が体が重い ・・・
酷使した場所は違和感ありありだし ・・・
「それは ・・・ 貴方が可愛すぎるから ・・・」
デレデレした顔で見つめてくるから
今更ながらの貞操の危機(笑)
「そんな目で見ても、もう無理だから ・・・」
無我夢中になった結果
風呂場に歩いていけなかった
抱き上げられて湯船に入れられ
体中泡まみれにされて洗われた
そん時、またもオイタをしようとするから
思いっきりぶん殴ったら
痛そうな顔したけど、濃厚なkissを繰り返す
キリがない ・・・ 俺を抱き潰すつもりか?
「そこまで見境が無いわけではない
貴方の事を大事に思ってますから」
「どの口が言う?
もう無理だって言うのに ・・・」
結局、風呂場でも致されたよ ・・・
「それは ・・・ 我慢できなかったんだもん ・・・」
何が『もん』だ ・・・ 全然、可愛くない
「それより ・・・ 腹減った!
作んなくて良いから、デリバリー注文して
ピザでもカレーでも寿司でも何でもいいから 」
残念そうなホッとした様な曖昧な顔をして
それから思いついたように
「カレーにしようか?」
って、提案する
「うん、それでいい ・・・ 俺は辛口な
5倍とかあんじゃん ・・・ それが良い」
「俺は普通にする ・・・ おっとコーヒー入ったよ」
得意げな顔で
マスターから貰ったアンティークカップに
珈琲を入れて運んでくる
「いい薫り ・・・ それに素敵なカップで飲むと
美味しく感じるんだよね」
美味しく感じるんじゃなくて
そもそも美味しいんだけど
なんせ、店だと8千円
お前が隣に座って、俺の体を起こして
それから、コーヒーカップを手に持たせてくれた
至れり尽くせりとはこの事だけど
起きられないからしょうがない
原因は全てお前 ・・・ 今日はどこにも行けない
「ジャコウネコちゃんの方が好きだな」
珈琲を一口飲んで、ニッコリ笑う
「象の方が草原って感じだよな
どっちも嫌いじゃないけど
俺もこっちの方が好みかな」
「ふふ ・・・ 貴方と好みが似ててよかった」
嬉しそうに笑って掠め取る様にkissをする
そんなにピッタリくっつかなくても
俺はどこにも行きゃしないのに
「早くカレーを注文して
その前に着替えて来いって」
背中に手を添えて
立ち上がるように合図する
「別にこのままでも良いんだけど
雨降ってるし、出かけないし」
「俺は受け取ればいぞ
その格好で金払うんだな?」
「あ ・・・ そうか ・・・ これは拙い」
自分の胸元を確認して
苦笑いして慌てて立ち上がる
そりゃ拙いだろ(笑)
胸元は、俺が付けた赤い印がいっぱい
それを見せびらかせないよな
「ねえ、この前のDM捨てた?」
お前が唐突に訊ねるから
何のことか分からない
「はあ?なんの?」
「青い色の和紙の封筒
あれって、絵具関係のDMでしょ?
洒落た封筒だったから、中の紙も気になる」
・・・ 中の紙ねぇ ・・・
「普通のDMと変わらないけど ・・・
それに捨てた ・・・」
「捨てたの?」
驚いた顔でこっちを見る
「いらないと思ったら捨てるだろ
何ら可笑しくないと思うが ・・・
・・・ それよりお腹空いたぞ!」
「まあ、そうだけど
綺麗な青色だったから ・・・
変わった紋が入ってたでしょ?」
「知らない ・・・ そこまで気にしてないから」
それだけ言ってソファーに横になった
それ以上の詮索は無用
諦めたのかそれ以上は聞かないで
着替えをする為に部屋から出て行った
<続きます>