眠い…
完全に寝不足
「おはよ、翔ちゃん」
「おはようございます」
「眠れたか?」
「あまり…」
「んふふ。だよな…でも翔ちゃんがうるせぇから仕方ないじゃん」
「すいません」
俺の寝息が煩かったらしくて
智さんから何度も蹴られた
お陰で寝不足の俺
眠れなくても腹は減る
着替えてリビングに行くといい香りがしてきた
旨そうな香り
「翔くん、おはよ。早く顔洗って。朝ご飯にするよ!」
「えっ、おはよ…」
笑顔の潤に若干戸惑う
すげぇ元気じゃん
もしかして無理して笑ってる…?
「じゅ…」
「おはよ、カズ」
潤に声を掛けようとした瞬間、後ろに気配を感じた
振り返ると二宮と彼女がいる…
「潤、おはよ。櫻井も」
「おはよう」
気まずい雰囲気なのは俺だけ?
二宮も潤も何もなかったように振る舞ってる
昨日の事…夢じゃないよな?
「早く、ご飯にしよ!!」
何事もなかったように普通に会話をしながら朝食を食べる
潤も笑ってる
二宮も昨日見せたような険しい表情は見せない
「翔ちゃん、昼頃には出発しよ?」
「はい」
「運転してくれる?俺、飽きた」
「わかりました」
昼までならたっぷり時間もある
潤ときちんと話をしたい
ちゃんと本物の笑顔にしてあげたいよ
「潤、あの…」
「後片付けしてからまた湖行かない?今度は僕がボート漕ぐから翔くんはのんびりしてて」
「潤…?」
「寝てないでしょ?顔、浮腫んでる。帰りの運転するなら少し休んでおかないと」
二宮の目の前なのに
潤は俺の顔を見てはっきり言ってくれる
心配…する必要ないよな?
潤の気持ちは俺にあるって思っていいよな?
「お姉ちゃん達は?」
「おいら達は決まってんだ」
「智くん?」
「ゆっくりふたりで温泉に浸かってるよ。昨日邪魔された分を取り戻さないとな」
潤が苦笑いしてる
二宮は…無表情
「…カズ達は?」
「別に。部屋でゲームでも…」
「二宮くん?!」
二宮はおもいきり彼女に睨まれちゃって
多分、どこかに連れてかれるな
部屋でゲームなんて絶対に無理だろう
後片付けを終えてから潤と湖に行ってボートに乗る
「潤、漕げるの?」
「ふふ。大丈夫。昔、漕いだ事があるもん」
「誰と乗ったの?」
「…カズと一緒に」
「そっか…」
「うん…」
聞かなきゃよかったかも
俺がどうとかじゃなくて
潤が今、どんな気持ちでいるのか…
岸から離れてゆっくり進む
何も潤は言わない
俺は…何を話せばいい?
「カズだ…」
潤の視線の先に二宮と彼女が俺らと同じようにボートに乗ってる
二宮はめんどくさそうに漕いでいて
向かい側の彼女は…
「幸せそうだね、あの子」
うん
幸せそうだよ、彼女はね
でもさ
それを見てるお前はどうなの?
お前のその顔は何を意味してるの?
「昨日はごめんなさい」
「えっ?」
「誕生日。一緒に過ごす予定だったのに台無しにしちゃった」
「それは…!」
「カズに嫌な事、たくさん言われたのに全部翔くんに…」
「いいんだよ!俺が二宮と話したかったんだから!!」
「翔くん…」
「潤が俺を好きでいてくれるなら誰に何を言われても構わない」
「ありがとう…」
あ〜あ〜
また泣いちゃうな
抱き締めたいけど、この距離じゃまずい
確実に二宮に見られるな
「潤、泣くの我慢して?」
「…ん」
「我慢してくれたらご褒美あげるからさ」
「ご…褒美?何?」
「今日は無理だけど、今度うちに来た時に…」
「何?」
「DVDの内容を実現して…」
「翔くん?!」
興奮した潤が立ち上がって
ボートがグラグラ揺れる
「翔くん、あぶなっ!」
「捕まれ!!」
俺に覆い被さる状態で倒れ込む
潤の顔は真っ赤だ
「ごめん。でも翔くんが…」
「潤、大好き」
「…翔くん」
「大好き。ずっと一緒にいよ」
「ずっと…?」
「うん。ずっと俺といて?」
「翔くん…」
俺達の姿は二宮達から見えない
だから大丈夫
潤をギュッと抱き締めながら
大好きな温もりを身体いっぱいに感じられて
俺がここにいる誰よりも一番
幸せなんだと感じた
俺達は大丈夫だよな、潤…!