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1972年のサファイヤ



このお話は、有名な物語【幸福な王子】をモチーフにして、私なりの解釈を交えて書きあげてあります。


その旨ご理解いただけます方は、どうぞお目通しください^^







 ポタリ、ポタリと背中に滴が落ちてくる衝撃に、閉じていた瞼を開いた。眠りに落ちる前までは確かに晴れていたはずなのだが、雨でも降ってきたのだろうかと空を見上げると、そのときと変わらず辺り一面綺麗な青空が広がっている。


(……? おかしいな)


 だが小さな自分の身体には、やはり濡れた感覚が確かに残っていた。人間ほどの大きさならば気のせいか、で済んだだろうが、自分はその手のひらサイズほどしかないツバメ。ポタリ、というささやかな表現よりはそれはもう結構な“衝撃”であったのだ。勘違いとは思えないが。



「もう少し眠ったら出よう」



 きょろきょろと周囲を見渡しても雨の兆しはないので、体勢を変えて目を閉じる。
 南の国を目指して仲間と共に飛び立ち、今もその最中であったが、途中余所見をしている間にその仲間たちとはぐれてしまい、懸命に追いかけているところだった。



「んっ?」



 慣れない長旅に疲労困憊しかけていた小さな羽根。ちょうど良さそうな場所に降り立ち、休息を取っていたのだ。その身体に、再度衝撃が走る。今度という今度は晴れているとは言わせない、そんな思いで上空を見上げた。――が。



「なんなんだ……」



 やはり、先ほどと変わらず頭上はすっきり清々しいほどに晴れ渡っている。もう気にしないで眠ってしまえ、と再度思い直したそのときだった。



「……ごめんね」
「――え?」



 消えそうにか細く弱い声が、雫と一緒に降ってきた。



「だ、誰?」



 今自分がいるところは、地上からは距離があってかなり高い。ものすごく近いところからでも、とてつもなく遠いところからでもなく聞こえてくるその出所を探す。




「私だよ」
 



 ――それは、今この身体を充電させていた場所。高い像のてっぺんからだった。




「あの……どうかしたのですか」



 パタパタと羽ばたいて近寄ると、雫の正体がすぐにわかった。この像は、かつてのこの国の王子を模ったもの。その王子さまの瞳から、涙が次々に零れ落ちていたのだ。



「君を起こしてしまうつもりはなかったんだ。ごめんね」



 質問に答えることなく、王子さまは静かにツバメに謝った。身体のあちこちに宝石が散りばめられ、金色に光り輝く、この国の誉とも呼ばれるべき象徴。その王子さまが何故、こんなにも悲しそうな顔をして泣く必要があるのだろう。



「どこか苦しいのですか?」
「いや、どこもなんともないよ。私はこの通り、生身の身体ではないからね」



 王子さまは動くことができないせいで、溢れる涙をぬぐうこともできず、ただそこにいた。



「それでは……」



 何故泣いているのか、と問おうとして言葉に詰まった。もしかしたら、踏み込まれたくはないことなのかもしれないと思ったからだ。
 しかも、見も知らぬ自分に話せることではないだろうと思い直し、口をつぐんだ。



「あの、西の方角を見てごらん。赤い屋根の家だよ」



 けれど王子さまは、そんなツバメの考えとは違った様子で遠くを見つめた。言われるままに、西の方角にある家に目をやる。



「あそこにはね、病気の子どもを抱えて看病しているお母さんがいる。それなのに、お金がなくて薬を買うこともできないんだ……」



 最後まで言葉にすることができず、王子さまはボロボロとまた涙を流し始めた。



「私は、ここでこうして立っていることしかできないから。貧しくて苦しんでいる人たちがたくさん見えても、どうしてあげることもできない」
「王子さま……」



 こんなに美しく着飾っていても意味がないのだと言わんばかりに、悲痛な面持ちで語る。街の一番てっぺんで全てを見下ろし、自慢の宝だと褒め称えられる存在であるはずなのに、王子さまの心の中には優越感も誇りも、ひとつとして感じられない。



「ツバメくん、お願い。私の頼みをひとつだけ聞いてもらえないだろうか」



 複雑な思いで王子さまの話を聞いているツバメに、頼みごとがあると言う。しかし自分には時間がない。



「あの……僕はこれから、南の国へ行かなくてはならなくて」
「お願いだよ。聞こえてくるんだ。助けて欲しい、幸せになりたいという声が。その声に応えてあげるためにずっと、私も願っていた」



 事情を伝えようとするのを遮り、半ば強引ともとれる強さで、王子さまはツバメに懇願した。



「一度だけですよ。一度だけなら……」
「ありがとう! ありがとう、本当にありがとう」



 断ったら自分はとても悪者になったような罪悪感にさいなまれそうだ、などというおかしな心境に陥ったのか。はたまた、王子さまのその勢いに根負けしたのか情に絆されたのか。
 とうとう、ツバメは折れることにした。これも、一宿一飯の恩義だ、と思って。



「どうすれば良いのでしょう」
「この剣のさやに埋められているルビーを抜き取って持って行って欲しいんだ」
「ルビーを!?」



 何を頼まれるのかと思いきや、自分の腰に刺さっている立派な剣のさやから宝石を取れという。



「良いんだ。早く、早く持って行って」



 ね、と王子さまは笑った。躊躇うことなくツバメの驚きを取り払い、行動を促される。



「はい、わかりました……」



 本人がそれで良いというのなら、問題はないのだろう。ツバメは言われるままに剣のさやからルビーを抜き、飛び立った。

 


「ありがとう」



 まるで自分の命が救われたように、呟かれたそれは。本当に嬉しそうな、満足そうな感謝だった。


 王子さまは赤い屋根だと言ったが、近くに寄ってみればその色は、赤茶けた、錆びれてこけたボロボロの屋根だった。かつては赤かったのかもしれないが、今はとてもそうは見えない。


 ――何故、王子さまはこれを赤いと言ったのだろう。


 こだわることではない。それでもそんな些細なことを不思議に思いながら、そっと部屋の窓へと降り立った。



「神さま……お願いです。この子を、たす、けて……」



 少年はやせ細り、頬を黒く汚しながら、ベッドの脇に眠る母親の手を握ったまま眠っていた。寝言で想いが紡がれるほどに、母親の胸は悲痛に叫んでいるのだろう。
 ツバメは、心がひどく締め付けられるようだった。



(もう、大丈夫だよ)



 神さまじゃないけれど、王子さまが助けてくれたからね。
 ツバメは口にくわえていたルビーを、少年のもう一方の手の中に置くと、静かに部屋を後にした。



「まあ、ルビーが……! ぼうやが、これで元気になるわ!」



 ああ、ありがとう神さまと、弾むような声がツバメの背中越しに届いた。振り返れば、泣きながら喜びに震えている親子が見えた。



「王子さま、良かったですね」
「君のおかげだよ。ありがとう」



 伝えるまでもなくその様子を見ていた王子さまは、その母子と同じように――いや、それ以上に幸せいっぱいの笑顔でツバメを出迎えてくれた。
 ツバメも、自分が何かとても良いことをしたような気持ちがして、ポカポカと胸の奥が温まるようだった。






 ポタリ、ポタリと雫が落ちてくる。また、王子さまが涙を流しているのだとツバメは気がついた。
 あれから、これが最後だ、これが最後だと王子さまに言い聞かせながら、王子さまの頼みを聞き続け、宝石を届けることを繰り返す度に、いつもツバメはびしょぬれになっていたからだ。



「今度は何が? どうかしたのですか?」
「……ああ。どうして、私はこんなにも無力なのだろうね」



 ツバメが王子さまの肩に止まり訊ねると、王子さまは、やはりポロポロと涙を零していた。像であるのだから表情が変わることなどないはずだが、ツバメの心に悲しさが伝染してしまうほどに、苦しそうに見えた。王子さまはいつも、高いこの場所から見える景色に、胸を痛めているのだ。



「私はね。かつて生きて、自由に動くことができていたとき……城の中で、とても幸せに暮らしていたんだ。塀の向こうで、こんなにも飢えた民がいることにも気づかず、自由であったのに、何をすることもなかった。どうして、あのとき私は、この場所に来て手を差し伸べられなかったのだろう」


 伝わってくる、悔み、悔み――悔み。

 素晴らしい王子さまと讃えられ、亡くなった後も豪華絢爛な像に仕立て上げられ街の中に建てられた。栄華の限りが尽くされ、幸福の王子と今もなお呼ばれている。通り過ぎる誰もがため息を漏らして見惚れるほどだ。


 それでも、せっかくのその輝きをはがしては、人に分け与えている。美しかったその身体は、どんどんみすぼらしさを増してゆく。
 そしてついには、両の目の宝石まで抜き取り、盲目となってしまった。



「仕方ないと思いますよ。だって、王子さまは……」



 そこまで口にしかけて、ツバメは思った。
 自分はどうなのだろうか、と。仕方のないことと見過ごしてきたものが、走馬灯のように駆け巡ってきたのだ。



「ツバメくん、本当にありがとう。もう、旅立たなくてはね」



 ツバメの言いかけた言葉に嬉しそうに微笑んで、王子さまが別れを切り出した。



「いいえ、僕はもう、ずっとお傍にいてお手伝いします」



 けれどもう、旅立つには遅すぎるということを、ツバメは分かっていた。冬の足音はすぐそこまで来ている。仲間はきっと、南の国にたどり着いているはずだ。



「いけないよ、それでは君が!」
「良いのです。僕が決めたことですから」



 王子さまが気に病む必要はないのだと言って、それからツバメは自ら目の見えなくなった王子さまに代わり、街中を飛び回った。



??


「王子さまありがとうございます……僕は、とても、しあわせ、です」
「――ツバメくん?」



 音もなく雪が天から舞い降りていた。薄れゆく意識の中で、王子さまの声を聞いた。不思議と、寒さは感じなかった。



(王子さま……また泣いてる。そんなに叫ばなくても、もう、みんなあなたのおかげで笑顔になることができたのになあ……)



「ツバメくん! 駄目だ、死んでは駄目だよ、起きて! 起きて、君は……! 南の、国に……私のせいだ、なんてことを……ごめんね……ごめんね」



 これまで聞いたどの泣き声よりも、悲しみに潰れそうな王子さまの声だった。やはりびしょぬれになってゆく身体は、積る雪を涙が溶かしてくれて、温かかった。



(違いますよ、王子さまのせいじゃない。僕は、本当に幸せだったんだ)



 首を振って否定したかったけれど、ツバメにはもう、かすかに目を開ける力すら残っていなくて。


「ツバメくん……っ」



 懸命にツバメの名を呼びかける王子さまの中で、パリン、と音が鳴った。ぐらりと傾いた王子さまの像が、地面に落ちる。歩いていた人たちが叫び声をあげて慌てて避けた。
 

  王子さまのハートが、悲しさのあまり真っ二つに割れてしまった音だった。







「目が、覚めたかな」



 荘厳な空気の中で、ゆっくりと話しかけられて目を開けた。



「私は……? っ、眩しい!」



 瞳が完全に開かれると、あまりの光の強さにもう一度目を閉じてしまった。真っ暗な夜、見慣れた街の中にいたはずなのに、ここは一体どこなのだろうか。



「あなたは……?」
「おや。忘れてしまったのか」



 笑い声と共に、ふわりと、暖かい風に包み込まれた。目が少しずつ慣れてきて、声のする方を見つめることができたが、姿が特定できない。
 ただそこには、大きな光があるだけだった。



「どうだった? 君の願を叶えてあげたが、満足することはできただろうか?」
「願い……? 叶える……? 願い……!」



 靄のかかったような記憶の中から、ひとつの糸が手繰り寄せられるように戻ってきた。



「私は、王子で。病気で死んでしまって……気づいたらこの場所にいて」
「そうだ。そして、天使に連れられてここへ、やって来た」



 ここへ来るのは二度目なのだということを、今度ははっきりと思い出すことができた。

 そして、両目の宝石を手放し、本来見えていないはずの自分の目が見えていることにはっとした。



「私は、この世界でもっとも美しいものをここへ持ってくるようにと、天使たちに伝えたのだ。そうして、天使たちが見つけてきた美しい魂は、君だった」
「いえ、違います! 違うのです、神さま!」



 顔色を変え、必死で首を振り、訴えた。美しい魂は、自分などではない。そう、美しいと言うのなら、自分の頼みを聞き入れ、命を賭けて人々を救ってくれたあのーーーー




「そうだ……ツバメくん! ツバメくんは、ここへ来ているのですか!?」
「ああ。来ているとも」



 安心しなさい、とその大いなる光は――神さまは言った。



「でも、どこにも」
「一度目にここへやって来たときも君は、そうして同じように違うと言ったね」



 辺りを見回してツバメを探そうとする王子さまに、神さまは構わず話し続けた。



「神さま!」
「だから私は、何故かと聞いた。すると君は」
「私は……美しくなんてない。城の中でひとり、豊かに幸せに暮らしていたのです。飢えに苦しむ人々のことも知らず、犯罪に手を染める人々を助けることもできず」



 視界が涙で滲んだ。肉体がないというのに、泣くこともできるのだなと王子さまは心の片隅で思った。



「そう。そう言って、天に向かうことを拒んだのだったね」



 そして、神さまが提案したのだ。



「では、心残りになっていることを消化してくるが良いと。そして、自分を汚いと言い続けるのだから、本当にそうであるのかどうか、私が証明するため、君の中から良心を抜いて、もう一度生まれ変わらせた」




 ――“ツバメ”の姿にして――。




「ツバメ……?」
「そうだ。君の良心は、黄金の像として街の中に創り出し、ツバメは良心というものを抜いた君の残りの自由な部分として」



 驚いて、王子さまは目を見開いた。



「良心そのものなのだから、像となった君が深く人々に同情を寄せても、何も不思議ではないだろう。だが、ツバメはどうだったかね?」
「もしかして、私が出会ったあの子……が?」



 そう口にした途端に、ずきりと頭が痛んだ。




 ――空を飛べるって気持ちがいいなあ……どこまでも、好きな所へ行けるんだ!――



 夜空に瞬く星の一番近いところまで昇り、暖かな寝床を探して眠り、大好きな木の実を食べた。



 ――僕は僕だけの人生を楽しむぞ!――



 阻むものはなく、高い壁を越えて、広い広い海を渡って。


 ないはずの、他の誰かの記憶がじわりと浮き彫りになる感覚がした。



「私が……あの、ツバメ……?」
「――良心を抜き取ったはずの君は、何故、君の頼みを聞いたのだろうか?」
「それは、私が無理やりに願ったからで!」
「本当にそうかな?」
「そうです!」



 神さま相手だというのに、食らいつくように語気を強めた。



  寒空の下、ひとり靴を磨いて働く少女に身体の金を?して与え。売れない絵を描き続け夢を追っていた青年に、眼の中のサファイヤすらも与えた。


 自分は、自己満足を感じることができたが、胸を痛めて願いを聞き入れ、自分の身体からあらゆるものを抜き取り、剥いでゆくツバメにはなんと酷いことをさせてしまったのだろうかと、悔恨の念さえ溢れてくる。


 しまいには、南の国に行く道さえ奪い、死なせてしまったのだ。
 それのどこが、美しい魂であるというのか。



「ツバメは、君が頼んでいないところまで、助けようと懸命だった。それは、自分の意思で、だ。思い出してごらん」
「私が、頼んでいないところまで……?」
 王子さまの持つ宝石を使ってではなく、自分の力で行ったことだという。



「……あ……」
「一晩、戻ってこなかったことがあっただろう」



 ふっと、思い当たることがあると気づいた。神さまは笑った。



「大富豪の家であったから、生活に困ることは決してなかった。だが、愛情というものに欠け、震える心を止める術を知らぬ女性の傍に寄り添って眠った……それだけのことだったが、大きな救いをもたらした。彼女は、命を断とうとしていたのだ」



 その日に旅立てばまだギリギリに間に合う、そんな夜だった。孤独という闇の中で光を失い、希望を感じられない冷え切った家の中から抜け出したくて、嗚咽をもらしていた女性に出会った。
 それは、王子さまに頼まれた宝石を届けた帰り道でのこと。



 
 ――ありがとう。ありがとう……ツバメさん――
 
 宝石を運ぶようになってから数日、一体どれだけの「ありがとう」という言葉をかけられただろうか。


 これまで訪れた家々と違い、必要なものが必要以上に揃った立派な部屋に、彼女はいた。ところが、ほかのどの人間よりも暗く、冷たく透き通った瞳をしていて驚いて。
 頬に擦り寄ると、そっと両手に抱えられ、涙を流していた。寄り添えば、別人のような表情になり、心底安堵して、彼女は笑ってくれた。
 貧しさの中だけに不幸があるわけではない、ツバメであったときの自分は、そんな気がして身を任せていた。




「愛とは、なんと尊いものだろう。彼女は命を断とうとしていたが、手を伸ばしてもいた。諦めようとしながらも、諦めたくないと望んだ。私に届いたその祈りは、ツバメを動かしたのだ」




 神さまが静かに語ると、また、王子さまの髪がふわりふわりと浮いた。まるで、頭を撫でられているかのようだった。



「望んでくれなければ、私も、天使も何も手出しはできない。それこそが、人々の価値であり、意義でもあるからだ。何もかも良かれと助ければ、無限の可能性も、どんなことも叶えられる未来も、花開く力を失ってしまう」



 どうして、神はこんなにも無慈悲なのだろうと思ってしまったことを悟られたようだった。自分の無力さを嘆きながら、これほどまでに過酷な状況に置かれている人々を前にして、何も手助けがないというのなら、神も仏もないと、恨んだことも否めない。



「そうだったのですか……」
「私は、この一件に携わっていない天使たちにもう一度、この世界でもっとも美しいものを持ってくるよう伝えた。君が二つに分かれて地上に戻ったことは、打ち明けずに。そうすれば、公平だろう?」



 光の中から、すうっと出てきたのは、小さな小さな身体。天使たちが大切に、その手に抱えている。



「ツバメ……くん……」
「何も知らない天使たちが運んできたのは、このツバメと、そして、割れた君のハートだった。像の君ではなく、二人だったのだよ」




 ――違いますよ、王子さまのせいじゃない。僕は、本当に幸せだったんだ――



 命の灯火が消える寸前のあの、ツバメの想いが、重なって響いた。
 確かにツバメは思っていたのだ。これまで生きてきた中で、最高のときだと。




「聖夜、君たち二人から……いや、君から。かけがえのない贈り物が与えられた。奇跡は、常にこの雪のように降り注ぎ、祝福は約束されている。だが、それを知らずに多くが、未だ闇の中にいるのだ」



  二人の命が途切れたのは、奇しくもクリスマスイブの夜。



「私は、とても嬉しかった。ありがとう」



 天使の手から離れたツバメの身体が、王子さまの胸の位置に吸い込まれていった。



「偽りの善など、ひとつとして存在しない。だが、君は我が身を汚いと罵り、挙句、自分がこの世でもっとも美しい宝石であることを認めようとしないね。私の中から生まれた君が、天使たちが愛してやまない君が、悪であるわけがないだろう」
「神さま……っ」




 わあわあと、王子さまは泣いた。幼い子どもに戻ったかのように、王子さまの品などどこかへ捨てて、形振り構わずに声をあげた。


 ひとり、またひとりと倒れていく姿を見て、孤独に震える訴えを目の当たりにして、それでもぐっと堪えて待つことの辛さを、王子さまは身を以て知った。


 人々が何を思い、暮らしているのか。更にはこうして自分が恨んでいることも気づいていながら、ただただ信じて受け止めていた神さまの、天使の慈悲がどんなに深いものであるのか。
 胸がいっぱいで、話すことなど、できなかった。



「君は、像でありながら願った。苦しむ者たちの幸せを。そのためにどうにかしたいのだと願った。そして、導かれるようにしてもうひとりの君が、ツバメが引き寄せられてきた。良心を抜かれたはずのツバメは、自らの意思で人々のため、それは知らずして己の喜びのために君に手を貸した」



 これがどういうことなのか、もうわかるね? と、神さまは王子さまに問いかけた。
 王子さまは、涙をぬぐうこともせずに光を見つめた。



「良心を抜いたところで、何も変わりはしないのだよ。最初から、君たち人間の中には、愛しか存在していないのだからね。君の魂を分けたことに意味はないのだ。この体験をしたことには、もちろん大きな意味はあるが」




 美しいものは、この世界すべての人々に宿る愛だと神さまは言った。本当ならば、世界中の魂を天使たちが運んで来なければならないところだったという。
 けれど、恵まれた日々の中を過ごし、決して傲慢になることも、奢ることもなかった王子さまが、天使たちの手を振り払ってまで、天に還ることを拒んだ。
 そして真実を伝えようと起きた、全てが神さまの計らいだった。



「富を持ち、豊かであることを恥じることはない。それもまた、素晴らしい経験なのだ」
「はい……」



 神さまの言葉の意味を、王子はようやく捉えることができた。 
街の人々を見渡しながら、見えたことがある。
食べ物もなく、暖炉もなく、飢えた苦しみは貧しい生活の中にあった。けれど、夢を持ち、かすかな希望を離さず、互いを想い合う優しさを持つ人々は、決して不幸などではないのだと。
そしてまた、物質的に満たされることで得られる喜びに限りがあることも知った。



「もう、自分を信じてくれますね。私たちは、ずっと見ていましたよ。片時も離れずに、いつも」



 そっと抱きしめられて振り返ると、天使が涙を流して微笑んでいた。



「あなただけの光として、見守っていました。私の仲間が、あなたを神の元へ連れて行く宝だと選んだとき、とても誇らしかった」
「ああ……ありがとう、ありがとう、ございます……」



 王子さまは、胸を押さえて膝をついた。ぽかぽかと温まるこの優しい心地は、きっと、もうひとつの魂の片割れであったツバメが与えてくれているものだろうと思った。



「でも神さま、どうして私をツバメの姿にしたのですか?」



 太陽のごとく偉大な光の向こうで、音も立てずに大きな扉が開いた。



「城の向こうを自由に駆け回りたいという願いを叶えた。それだけのことだよ」



 満たされた心の奥で、神さまが答えてくれたのがわかった。


 王子さまの身体から、みるみる金色の輝きが放たれてゆく。

  

  塗りたてられたメッキではなく、これは王子さまの中から溢れ出す本当の美しさ。

 抱きしめているものは、ツバメであったときに感じた、あの満たされた気持ち。
 喜んで報告してくれたツバメの話を聞いたときの、たとえようもない気持ち。
 人々が褒めたたえる黄金の自分じゃなくなっていっても、幸せだった。南の国にいなくても、暖かった。


 人々が見せる笑顔、弾むような声。差し出していたものは人々にではなく、自分へと帰ってきていていた、幸せ。


 喜びの象徴とされたその姿は――まぎれもなく、幸福な王子そのものだった。




サファイヤって実はツンデレじゃね?

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