こんばんは。
ベトベト気味なチャーハンも好きです。
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あ、電話来てた
別の部屋でキャンバスに向かってたオレは
リビングのテーブルに置きっぱなしだった
ケータイを手に取って……その場で固まった
短い間隔で並ぶ彼女からの着信履歴を
ただただ静観してる自分に問い掛ける
ほら、ボーとしてないで掛け直せよ
3分前にも掛かって来てんだから
向こうもすぐ出れるだろ
でもなんでだろう……オレの手は動かないし
なんの感情も湧いてこない
彼女からの電話に最初はあった嬉しさも
いつしか億劫になり
掛け合うコトが毎日の義務のように
重くのし掛かるように感じられると
あっという間に面倒になった
プルッ……!
程なくしてまた電話が鳴り始めて
大きなため息が音もなく洩れる
何回鳴るか数えてやろうか
6、8……12……20……25……?
25回で呼び出し音が止まった
息をつめてたのか心臓が痛い気がする
今さら留守電にするのも変だし
また掛かって来たら取ろうか
どうせすぐに掛かってくるし……
なんて思ったら途端に気分が滅入った
またか
付き合いだして最初の1ヶ月やそこらは
なんとも思わないのに
いつも途中からすれ違いっつーか……
彼女とオレの間の熱量の差に
冷めてくるんだよなあ
なんでオレはこうなんだろう?
でも気付いた以上は自分の気持ちに正直に
なって今のこの状況に終止符を打ちたい
「あぁ……しんど」
逃げるようにケータイの電源を切った
煩わしい電話なんて苦痛でしかない
『もしもーし……あれ?もしもーし!』
電話の相手のあわてふためいた声が
スマホのスピーカーから聞こえた
『聞こえてる?……もっしもーし!?』
面白いからもう少し出ないで遊んでやろう
『居るんでしょ?おーい、リーダー?』
これ以上やると怒るからスピーカーを
オフにしてスマホを耳に当てた
「はい」
『あ、なに、なんですぐ出ないの?』
「今どこ」
『うるせえよ、バカ、無視しやがって』
「京都のホテル着いた?」
『無視すんなって、聞いてんの?』
「聞いてる」
ソファから立ち上りビールを取りに
キッチンへ向かう
「ニノ」
『なんだよ』
「ふはは、いや、ニノからの電話待ってた」
『……着いたらするってゆったよ、オレ』
「そっち雨降ってねえの?」
『キレイな月が出てた』
「満月だからな、まん丸だろ?」
『そんなコトより来る時の新幹線の中で
太一くんに会ったよ、おんなじ車両でさ
オレもだけど向こうもビックリしてた』
手に持っていたスマホを傾げた首と肩に
挟んで冷蔵庫からビールを取り出した
『あ、もう一杯やってんの?早くない?
オレ今からまだ取材だよ、それも2件』
「もっと喋って」
『へ?……いつもうるさいって云うくせに
やっぱオレが居ないと寂しいのかな?』
「うん、寂しい」
もっと、もっと、ニノの吐息を感じたい
『ええ?もう……んふふ』
吐き出される甘ったるい吐息をひとつも
聞き逃すコトのないように
スマホを耳にギューギュー押し当てる
「早く会いてえな」
『そんな……そんな風に素直になられたら
オレも会いたいって云いたくなるじゃん』
「ダメだな、オレら、3日も我慢出来ない」
『うん、ダメダメだね?』
「明日の夜はオレから掛ける」
もう今から明日の夜が待ち遠しい
『たぶん遅くなると思うよ』
「朝もするからな」
『モーニングコールですか?』
「このまま切らないって手もある」
『オレは明日も仕事だし今だって10分も
したらマネージャーがドア叩くの、わかる?
一杯飲んでるヒマな人と一緒にすんなって』
「ヒマはねえだろ、オレだって忙しいんだよ」
『なんかやってたの?』
「恋人と電話中」
『はいはい、そりゃ良かったね』
出来れば切りたくない
『でもさ、なん……あ、はーい!』
マネージャーが来たな
ちょっと早いんじゃねえか?
『じゃ切るよ、また明日ね』
明日か……長いな
通話の切れたスマホの画面を暫く眺めて
通話時間分のニノと共有した想いを
胸に大事にしまった
ニノと付き合って何年にもなるけど
気付けば電話は苦痛じゃなくなっていた
ずっと繋がっていたい。
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ありがとうございました。